小樽の冬のイベント「雪あかりの路」の名称は、小樽出身の詩人・伊藤整の作品『雪明りの路』にちなみます。
伊藤整(いとうせい、本名:いとうひとし)は、1905(明治38)年に生まれ、幼少のころ小樽に転居し、小樽で育ちます。彼が21歳だった1926(大正15)年に、初めての詩集『雪明りの路』を自費で出版します。その『雪明りの路』というタイトルは、親友・川崎昇の意見を入れたそう。
伊藤整が小樽高商(現小樽商大)の学生だった1923(大正12)年に、川崎昇と相談をしていたという建物「旧衣斐(いび)質店」が、小樽市稲穂に現在も残されています。質店だったため、母屋裏には石蔵がつながっています。
市指定の歴史的建造物ではありませんが、町内会などによって建物に関する説明が掲示されています。
ああ 雪のあらしだ。
家々はその中に盲目になり 身を伏せて
埋もれてゐる。
この恐ろしい夜でも
そつと窓の雪を叩いて外を覗いてごらん。
あの吹雪が
木々に唸って 狂つて
一しきり去つた後を
気づかれない様に覗いてごらん。
雪明りだよ。
案外に明るくて
もう道なんか無くなってゐるが
しづかな青い雪明りだよ。
伊藤整『雪明りの路』より「雪夜」