小樽の歴史的建造物の設計者と、その作品=建築物について紹介します。
まずは、佐立 七次郎(さたち しちじろう)です。
佐立は、まだ江戸時代の1856年に讃岐(香川県)に生まれました。
現在の東京大学工学部建築学科のルーツである工部大学校造家学科で、イギリスの建築家 ジョサイア・コンドルに学びます。
1879(明治12)年、工部大学校造家学科の第1期卒業生は、佐立を含め4人でした。小樽にはこの4人のうち3人の作品が現存しています。
工部大学校造家学科 第1期卒業生 | 小樽に現存する建築物 | その他の現存建築物 |
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佐立 七次郎 | 旧日本郵船株式会社小樽支店 および残貨倉庫 | 日本水準原点標庫 |
辰野 金吾 | 日本銀行旧小樽支店 | 東京駅丸の内駅舎 |
曾禰 達蔵 | 旧三井銀行小樽支店 | 慶應義塾大学図書館 |
片山 東熊 | 迎賓館赤坂離宮 |
佐立の小樽に現存する作品である「旧日本郵船株式会社小樽支店」は、1906(明治39)年に完成しました。竣工直後に、日露戦争後の日本・ロシア間の樺太(サハリン)国境画定会議が行われました。国の重要文化財に指定されています。
2024年6月まで保存修理のための長期工事が施工されています。最近ようやく建物の覆いが外され、外観を見られるようになりました。保存修理工事について、小樽市のホームページで詳しく解説されています(こちら)。
旧日本郵船株式会社小樽支店に隣接する建物が「旧日本郵船株式会社残貨倉庫」です。こちらも支店の建物同様に佐立の設計によるものだそうです。画像では、支店の建物は保存修理工事のため白いカバーで覆われています。
東京の都心、国会議事堂前庭に佐立が設計した「日本水準原点標庫」が現存します。この小さな石造りの建物には、日本の水準測量の基準点が収められています。小樽の旧日本郵船小樽支店より15年前の1891(明治24)年に完成したこの建物も、国の重要文化財に指定されています。
日本水準原点標庫の所在地です。私は東京で20年暮らしていましたが、今回初めて訪れました。
繁華街・日比谷や、観光客が多い皇居外苑からも近い場所なのですが、ほとんど人影のない静かな場所でした。まるで都心のエアポケットのような場所に、ひっそりと明治時代の石造建物がたたずんでいます。