小樽に昔からある庶民的なおやつ「ぱんじゅう」。その語源は、パンとまんじゅうの掛け合わせらしいのですが、小樽のぱんじゅうには、あまりパンの要素は感じられません。
小樽以外にも、三重県伊勢市、栃木県足利市の名物だそうです。けれども、私が両市を観光で訪れたときには、「ぱんじゅう」の存在は気が付きませんでした。小樽もそうですが、日持ちしないので、お土産として持っていける範囲が限られるため、知名度も限定的なのでしょうか。
2023年3月上旬、仕事で北海道・夕張市を訪れました。そのときに初めて知りましたが、夕張にも『小倉屋ぱんぢゅう店』という長く続くお店があるのです。
今回は小樽の「ぱんじゅう」のお店の紹介と、小樽と夕張の「ぱんじゅう(ぱんぢゅう)」の食べくらべです。
小樽のぱんじゅうの代表に選んだのは、JR小樽駅と小樽運河の間にある都通りの『西川ぱんじゅう』です。私の子供の頃に比べると現在の都通りはすっかり寂しくなってしまいましたが、『西川ぱんじゅう』は変わらずに営業しています。
さらに小樽のぱんじゅうのお店は、中央通(駅前通)に『正福屋』と、色内十字街の中央バス・小樽運河ターミナル(旧三菱銀行小樽支店)に『桑田屋』があります。どちらも観光ルート上にあるので、散策で小腹がすいたときのおやつにいかがですか?
夕張の『小倉屋ぱんぢゅう店』のぱんぢゅうです。こちらは「ぱんぢゅう」の表示です。
小樽との特徴的な違いは、半球部の下に厚手の土台部分があることです。土台部分は厚みが5ミリくらいあり、土台部分まで含めたものが夕張の「ぱんぢゅう」の1個のかたちです。
さらに、夕張の「ぱんぢゅう」は小樽に比べると一回り大きく、しっかりした土台部分もあるため、ボリュームがあります。
小樽のぱんじゅうはパン感がありませんが、夕張は土台部分にパンの要素が感じられるような気がします。
冒頭にも触れましたが、ぱんじゅうの語源は「パン」と「まんじゅう」のようです。
まんじゅうは漢字で表すと「饅頭」饅まん・頭じゅう。あらためて考えると、なぜ「頭」という漢字を「じゅう」と読むのでしょうか?これは漢字の発祥の地・中国の長い歴史の中で発音が変化した痕跡が日本に残っているからです。
大まかに漢字には音読みと訓読みがあり、中国の発音を反映しているのが「音読み」。そして、音読みも中国から日本に伝わった順に、呉音→漢音→唐宋音があります。
「頭」の呉音は「ず」、漢音は「とう」、そして唐宋音が「ぢゅう」。饅頭の頭は元来は「ぢゅう」という仮名遣いだったものが、太平洋戦争後の現代仮名遣いでは「じゅう」と表されるようになりました。したがって、現在では「ぱんじゅう」が原則だけれども、懐旧的に「ぱんぢゅう」もありということでしょうか。